カズオ・イシグロ『日の名残り』は古本価格も値崩れしていないベストセラー

ノベール文学賞受賞で話題沸騰のカズオ・イシグロ。何冊か読んでいましたが、その中でも大好きな『日の名残り』を再読しました。
20世紀前半から中盤に、イギリスのダーリントン卿の元で執事を務めたスティーブンスが旅の道中で過去を術懐する物語です。思い出話もさることながら、イギリスの風景描写も素晴らしいです。

この小説ではスティーブンスの毅然とした執事の仕事ぶりに唸ってしまいます。
父から受け継がれた執事としての資質もあるのでしょうが、執事たるものこうあるべきという確固たる信念に胸を打たれます。
主人への忠義心もただものではなく、その忠義あっての執事職なのだなあ、と思います。その振る舞いはいつもエレガント。
アクシデントにもたじろぐ事なく、顔色一つ変えずに立ち回るその姿はあっぱれです。

でも時にユーモラスなんですね。スティーブンスがあまりに生真面目なものだから。
常に品格ある執事然としたスティーブンスですが、デキる女中頭ミス・ケントンにほのかな恋心を抱くようになるのですね。
この二人の関係性もこの小説の肝となっています。
彼の内の執事魂が、彼女への思いを邪魔するんですよね。
この辺りのもどかしさを楽しめる方はこの小説を好きになるでしょう。
結局、思いを伝えない内にミス・ケントンは邸を去ります。
旅の途中、ミス・ケントンと再会するシーンがあるのですが、そこでちょっとスティーブンスが可哀そうになるんですね。

邸宅で行われた会議ー大戦中、各国の要職を集めた重要な機密会議が、執事の目を通してスリリングに描写されます。

卿の死後の旅の終わりに、長きに渡る主人への思い、ミス・ケントンへの思い出の中でスティーブンスは涙を流します。最も美しく、哀しいシーンです。

人生の黄昏を描いたこの小説は、派手さはないが、しみじみ心に染みわたる名作といえるでしょう。

アマゾンで調べてみたら、中古本の売値もまだまだ値崩れしてなくて高かったです。
古い本はベストセラーでも1円になることがざらなのに凄いですね。
読んだ後買取に出せば数百円で売れるかもしれません。
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