数奇な人生を生き抜いた、一人の女性「千姫様」

平岩弓枝先生の歴史小説です。

主人公は徳川家康の孫娘で、豊臣秀頼の正妻であった千姫。

大阪落城の場面から物語が始まり、千姫が再縁し、亡くなるまでの後半生を描いています。

千姫の侍女である「三帆」という女性の目を通して、彼女の激動の人生が描かれます。

姑や夫を失った大阪の戦い、江戸へ戻る最中に出会った、初めての恋の相手・本田忠刻。彼との恋を実らせ、再縁し、子宝に恵まれるも、思いがけない暗雲が忍び寄ってきて……。

豊臣家重臣の娘であり、密かに忠刻へ想いを寄せる三帆の胸には、千姫への複雑な愛憎があります。

そこへ秀頼生存の噂や、瀬戸内を荒らす謎の海賊の登場で、物語はいっそう複雑に。

秀頼は生きているのか?など、史実とフィクションを上手く組み合わせて、わくわくさせてくれます。

それにしても、描写は少ないのですが……本作での千姫は、姑である淀のお方と、とても良好な関係を築いていた模様。

作品によっては嫁姑として、とても仲が悪く描かれることもある、この二人。

本作ではむしろ、実母のお江与様とはよそよそしく、伯母である淀君と、実の母子のような情愛を持っていたようです。

六歳で豊臣家へ嫁いでから、伯母と姪として、また義理の母子として、仲睦まじく暮らしてきた二人。

夫の秀頼とも仲は良かったようですが、千姫や周りが語る淀君は、母のように千姫を慈しんでいたようで。

手をとって習字を教えたり、千姫が描いた文字を大切に取っておいたりと、慈愛あふれる接し方に、心が温かくなりました。