パルプ

とにかく荒唐無稽な物語でした。表題にもある通り「パルプ」つまり、安い大衆向け雑誌に載っているような悪ふざけに溢れた本で、読んでいて思わずニヤニヤさせられました。

ストーリーが目まぐるしく進行するので思わず引き込まれてしまい、気が付けば一気に読み通していました。

何といっても主人公のダメ人間っぷりが痛快で、ぐうたらで適当なヘボ探偵なのに事件だけは勝手に解決していくという都合の良い展開も、物語に勢いを与え、その面白さに拍車をかけています。

次から次へと妙な以来が舞い込み、俗悪なやり取りが繰り広げられ、初めは馬鹿げた探偵小説かと思えば、次第にSFめいたり超自然的な展開へと雪崩れ込んでいくというストーリーはまさに、良質な「俗悪小説」といった印象です。

登場人物も、セクシーな死神やら宇宙人やら強烈な印象の人々が多く、一筋縄ではいきません。

特に印象的だったのは、とっくの昔に死んでいるはずの作家セリーヌです。セリーヌは『なしくずしの死』などの作品で知られる実在の人物で、いわゆる「呪われた作家」の系譜に位置する小説家です。

このセリーヌを追うというのが本作の大きな筋の一つなのですが、主人公のダメっぷりや本作の舞台になっている下層社会の雰囲気は、どことなくセリーヌの作品にも通ずるようなどうしようもなさがあり、そういう連想が物語に不思議な奥行きを与えているように感じました。

思えば、この物語にはどうにも死の匂いが付きまとっているような気がします。死んだ作家や、それを追うように依頼する死神、そして本作が作者自身の遺作でもあること。

本作の意味深なラストシーンも、その正確な意味は分からなかったものの、やはり死の匂いを感じます。

しかしそれが前面に出るわけではなく、あくまで物語は馬鹿馬鹿しく騒々しく賑やかに進行していきます。そのためか読後には、低俗な内容を満載した物語のはずなのに、高尚な小説を読んだ時のような気持ちになりました。

また、この本にはアメコミ調の挿絵がつけられているのですが、物語の雰囲気とマッチしていてとても良かったです。

この作品は、ジェットコースターのような痛快でエンターテイメント感溢れる小説ですが、その奥には何かあるぞと思わされるような一冊でもあったと思います。